四十九日間のキセキ

「実はそうなんだ、それでこの前手術をしたの。左胸無くなっちゃった」

その言葉と共にぎこちない笑顔を浮かべる紗弥加。

「そうだったの。でもそこまでしたんだから治るんだよね」

「それがそうでもないの。何日か前に言われたんだけどガンが肺に転移しちゃったって」

その言葉を聞いた葵は思わず声を張り上げてしまった。

「どうして。女の子にとって大事な胸を取ったのに、それなのに転移ってそんなの辛すぎるじゃない！」

そういう葵の瞳には自然と涙が浮かんでいた。

「ありがとうあたしのために涙を流してくれて。だけど仕方ないよ転移しちゃったんだから。あたしはこの事実を受け入れて治療に励むしかないわ」

この時隼人が紗弥加に向けて呟いた。

「お前強いんだな、昔からこんな強かったっけ？」

「強くなんかないよ、あたしだって泣きたいわ、せっかく手術をして退院できるかなって思ったところへ転移だもの。辛くないわけないわ」

ここで葵は隼人から聞いたある事実を本人に確認する。

「ところで紗弥加さぁ、隼人に聞いたんだけど病気を理由に婚約者の人と別れたってほんとなの？　聞けば病気のことを隠したままあんたの方から別れを告げたそうじゃない」

「ほんとよ」

「どうしてそんなことしたの！」

「だって彼に迷惑かけられないじゃない」　

そんな紗弥加を葵は悲しみをこらえつつも叱りつける。