「どうしてそんなに落ち着いていられるんだ」

孝之が尋ねると紗弥加はその理由を語り始める。

「だってお母さんがそんなに泣いていたら何かあったって思うじゃない。その間に心の準備はできたわ」

「そういうことだったんだな、先生の話では手術で取り切れなかった小さながん細胞が肺へと飛んでしまったのではないかということだ」

孝之の説明にも意外と落ち着いた様子の紗弥加であったが、それは両親にこれ以上の心配をかけたくないために無理に装っていたからに他ならなかった。

「そう、それでこれからはどうするの、また手術?」

「それ以上は分からない。俺たちも先生からまだ聞いてないからな?」

「そう、それじゃあ仕方ないわね」

「あとで先生から説明があるわきっと」

涙ながらに香織が言うと紗弥加が応える。

「なら先生の説明を待つしかないわね」