彼女は、右手を挙げて 黒いスーツの強面の『課長』と呼ばれていた
男を呼び寄せる。
中腰になりながら、
スーツ男は、中に入り、
僕の隣にすっと座る。
一礼して、
「これを。」
数枚のつづられた紙を差し出す。
彼女は受け取ると、
ぱらぱら 見始める。
「報告、ご苦労。」
「・・・恐れ入ります。」
「ほら、朝日。
不思議だろう?君の周りで、この『気』の
不確定発生が 多いんだ。」
ちらりと見せられた
地図と、
それにマークされている点。
確かに、僕の住んでいる町だし、
たぶんその辺は家で、学校・・・
「この『気』は
発生すると、磁場がゆがむ。
それで、彼らが『散らし』に行くんだが・・・
ここ最近・・・
藤田 朝日。君の周りで 異常なほど多くなっているのじゃ。
なにか、心当たりは?」
「え?」
心当たり・・・
まぁ、あるっちゃぁあるけど。
ちらりと腕にはめている緑のブレスレットに目をやる。
「まぁ、見える者には
この気は集まりやすいがな。」
チリン。と 彼女が首をかしげると 鈴の良い音がなる。
「だから、
手伝いをしてほしいんだ。
夏休み、学生さんだから、暇があるだろ?」
にこりと彼女が微笑む。
綺麗な笑顔に、思わず顔が引きつる。
って、
手伝いって・・・だから、バイトを勝手に休ませたのか。
って、
どんな 圧力だよ。
「ふふ。
そんなに、睨まなくても。
まぁ、お気づきの通り 国家権力の後ろ盾があるから大丈夫。」
「え?」
国家権力って・・・
「とりあえず、指示は、彼から受けてとるがいい。」
僕に、『拒否』権はないんですね。
はぁ、と言いながら彼女がふわりと立って 部屋から出ていくのをぼーっと 見送った。
あぁ、なんだか
流されることだけは 上手になったな・・・
思わず遠い目で
今後のことを思案した。


