「はぁっ…はぁっ…っ」
やっとついた。
息を切らしながら、尋ねる。
「ゆずの…ゆ…ゆずの部屋…」
「海川ゆずさんですね。302号室です」
「どうも…っ」
また走る。エレベータは使わず階段で一気に登る。

「はぁっはぁっ……………ふぅ…コンコン」
深呼吸をしてノックする。

「どうぞ」
ゆずの声だ。

ガラッと扉を開けると部屋は個室だった。明るい日差しが差し込む大きな窓に、たった一つの小さなベット。

「加藤!?どうしたの?なんでここにいるの?」
「そこ、座っていい?」
ベットの横にある椅子を指差した。
「うんいいよ」


「で、なんで?」
「入院してるって聞いたから」
「だからってどうして来たの?」
「…別に、少し心配しただけ」
「そっかぁありがとう」
ゆずは加藤に笑顔を向ける。

「今日もそれ持ってるんだね」
「それ?あぁ、つる」
「お気に入りなの?」
「うんまぁ」
「ふーん」

沈黙が続く。


『自分の気持ち伝えてこいよ』


ハッと加藤は拳を作り、強く握りしめた。そして

「ゆ、ゆず」
「なに?加藤」
「あのさ…」
「?」
「俺、ゆずのこと好きなんだ」
「えっ」
「ゆずがどんな理由でここにいるのかまだ知らないけど、俺にできることがあれば何でもしたい」
「好き。ってなに?付き合うってこと?」
「え……うんまぁ…」
「私も、加藤の事好きだよ」
「えっほんと?」
「…うん」
「えっ俺らもうカップル??」
ゆずは恥ずかしそうに首を縦に振った。


「それで、ゆずはどうしてここにいるの?」
「去年、病気が見つかって、通院してたんだけどとうとう入院になっちゃったの」
「どんな病気なの?」
「心臓の病気…」
「……それって死ぬこともあるってこと?」
「死なないよ!!私、結構強いし!」
「そっか。なら良かった」

加藤は笑みをこぼし、学校の事を話してあげた。それをゆずは優しい笑顔で頷きながら聞いていた。