「気を付けて帰れよ」
下校時間が近づくと、佐野っちはそう言って私の頭をぽんぽんっと優しく撫でた。
「佐野っちはいつ帰るの?」
久しぶりに佐野っちって呼んだかもしれない。
なぜか最近は、先生と呼ぶことが多い。
「俺はもうちょいやることあるからさ、まだ帰れないかな」
「そっか、大変だね。頑張って」
「おう、ありがと」
先生は照れくさそうに頭を掻いて、もういいから早く帰れ、と言ってデスクの方を向いた。
そんな先生が可愛くて、わたしはふふっと小さく笑った。
「さよーならー」
「はい、さようなら」
そう言って化学準備室を出る。
まだ外は明るくて、少し蒸し暑い。
爽太に・・・会いたい。
ふとそう思う。
ずっと話してなくて、距離はただただ離れていって。

