「頼みたいことって?」
「んー・・・お前が来る前に終わったから、いいや」
「え、じゃあ・・・失礼しました」
そう言って化学準備室を出ようと佐野っちに背を向けて、さっき開けたばかりのドアにまた手をかけた時だった。
ドンッと音がして、開けようとしていたドアが先生の手で止められる。
骨ばった、綺麗で大きな手。
もう一方の手は私の肩に回されて、後ろから私を抱きしめた先生。
・・・・うわ・・・・。
前にも後ろにも逃げ場がないこの状態に、心臓がうるさくてたまらない。
「せんせ・・・・」
「口実」
「え?」
「頼みたいことがある、っていうのは・・・お前と一緒にいるための口実」
あーもう、なんで分かんないの・・・と恥ずかしそうにそう言った佐野っちが可愛くて。
肩に回された佐野っちの腕を掴んで言った。
「佐野っち・・・可愛い」
私からふふっと小さく笑みがこぼれると、佐野っちは少しムッとしながらも優しく笑った。

