彼女の瞳は濡れてしまって、彼女は手の甲で何度も頬を伝う涙を拭っている。



芽悠にキスして、好きって言って・・・・・。

普通、芽悠のことが好きなら他の奴とキスするなんて・・・・有り得ない。


それなのに俺は・・・・・横岡とキスした・・・。



「違う!違うの・・・・!」



彼女のすすり泣く声だけが響く廊下に、横岡の声が混ざってまた響いた。

芽悠は驚いたように横岡を見たけれど・・・すぐに彼女から目を逸らした。



「真奈美・・・・ごめんね。
私ね、爽太のこと・・・・・
_____ずっと好きだった」



苦しそうで、切なげな彼女の掠れた声が小さく聞こえた。

発せられた言葉に、ドクン、と心臓が音を立てて鳴ったのが分かった。




「でも、もう・・・・・・
______違うよ。
私ね・・・・・・」



違う・・・・・?


その言葉を聞いて、次に彼女が言おうとしている言葉が・・・・・・・分かった気がした。

聞きたくなかった。

逃げ出せば良かった。




「先生のことが・・・・・好き・・・」




彼女の口から出た言葉が、小さな声が、暗くなっていく廊下が・・・・・

全てが現実味を帯びていなくて。



ぐっと喉元が絞められたように息が苦しくなって・・・・・・胸が痛みを感じて強く締め付けられる。

結局俺は、彼女の気持ちを・・・・

___繋ぎ留めることが出来なかった。




好きって言葉も、


愛してるって言葉も、


いくら言っても、届かない。




もう・・・

好き、って言葉じゃない。



だって・・・・諦める意外ない。

諦めないって言えるほど・・・・・俺は強くない。




だから、今は・・・・・こう言うしかない。







__________好きだった。







大好きだったよ、芽悠。