その瞬間、ぐっと胸元を掴まれ、体が流生の方に引き寄せられた。

胸元を強く掴まれて、息が出来なくなるほど胸が苦しくなる。



「・・・・好きなのは勝手だ。だけど・・・・・・アイツを傷つけるなら、今すぐ離れろ」



"離れろ"


怒りで震えた流生の声が、朝の記憶をより鮮明にしていく。


・・・・・・・・分かってる・・・。



芽悠を幸せに出来るのは・・・・お前みたいな奴だって。

芽悠のことだけを見つめて、傷つけずに・・・・大切にしてあげられる奴。



ふっと離された胸元に、ぎりぎりとした感覚が残る。


その感覚が、傷を深めていく。



痛みの中でもがき苦しみ、終わりのない道を歩んでいるような気がした。

痛みの中から抜け出せない。

この運命から、苦しみからは・・・・・逃れられない。



流生はそれ以上何も言わず、俺の横を通り過ぎていった。

芽悠を追いかけるわけでもなく、何かを考えるように遠くを見つめていた流生の瞳。


今、芽悠を追いかけても・・・自分には何も出来ないと感じたんだろうか。

一瞬だけ見せた哀しげな瞳が・・・・・流生の芽悠に対する真剣な気持ちを、映し出していた。