君は荷物をまとめる僕の背中に寄り掛かってきた…耳元で微かに啜り泣く声が聞こえた。
「茜、どうしたの??」
僕は思わず振り向こうとした。
その時…「こっちを向かないで!!」
「お願い…少しだけでいいから…少しだけこのままでいさせて。」
僕は頷くしかなかった。
頭の中を色んな事がぐるぐる廻っていた。
茜は一体何を抱えているんだろう?
何故僕にこんな一面を見せたのか?
それ以外に違う感情が生まれてきた…僕が茜を護りたい。抱きしめたい。

お互い無言で僕は考えてることを行動出来ないままだった。
たった5分が1時間も2時間も限りなく永く思えた。
ふっと背中が軽くなった…振り返るといつもの笑顔でこっちを見ている茜がいた。
僕はあえてさっきの事に触れずに「帰るよ」って伝えた。
それから茜に玄関まで送ってもらって茜は、「またね。」と言った。

その言葉を聞いた瞬間考えるより先に身体が動いていた。
気付いたときには、僕は茜を抱きしめていた。
何も言わないけど…茜は手を震わせながら僕に抱き着いてきた。
抱きしめてわかった…茜はこんな小さい身体で闘っていた。
毎日、毎日、溢れないばかりの悲しみを抱えて。

その時の僕にはその事を知る術はなかった。
ただ何か辛いことがあったぐらいだと思っていた。
実際にはそんなに簡単なことではなかったのに。

「茜、俺からは何も聞かないけど…話したくなったらいつでも話してね。」

「ありがとう。」
「武内君優しいね…でも今は話せないけど、いつか話せるといいな…。」
そういうと茜は僕から離れていった。
「今日はありがとう。」
僕が「うん。」といいながら茜の顔を見るといつもの笑顔で僕を見ていた…違うところがあるなら涙の跡と腫れてしまった眼だった。

その時僕は…。