「ファルー!」




私に名前が付いたのが嬉しいのか私の名前を何度も呼んでくる。


私に名前が付いたのが何故嬉しいのかよくわからない。


わからないけど、ファインが喜んでいるのならそれでいい。






ギィ……




「あ、いらっしゃいませー」


「願い、叶えてくれるんだよな?」


「寿命を対価分いただければ!」




商売をしてるとき、ファインは邪魔してこない。


うちによく来る烏と遊んだりぼーっとしたりして待っている。




「はい、そのお願いは寿命27年です。けれど、貴方の残りの寿命は27年と3ヶ月ですけれど如何しますか?」


「いいんだ。これで娘が助かるなら」


「まいどありー!そのお願い叶えた!ほらほら帰って娘さんの容態みてあげてください!」







ギィ……バタンッ









いつもより元気に接客をしてた気がする。


理由はよくわからないけど。




「ファインー、終わったぞー」


「う…うん」




その返事はなんだか小さくて元気がなかった。


どうした?と尋ねてみると




「僕の寿命っていくつなのかなぁっと…」




それを聞いて、なんだか申し訳ない気持ちになった。


何故だかわからないけど。


666年生きていてもまだわからないことだらけ。




「…言っておくけど、ファイン。君の寿命はここで叶えるお願いの対価とは別の所で磨り減っている」


「どういうこと?」


「心傷、かな?心の病で寿命が少しずつ縮んでいるみたいだ。それでも寿命が知りたいか?」




静かに頷くファインの目は真っ直ぐ私を見ていた。


本当のお願いは死ぬまでに叶えたいとでも考えているのかなんなのか。


人の心を読むことができる魔法があればいいのに。










「ファイン、君の寿命はあと1年だ」