「いらっしゃいま……また君か」




いつも通り本を読み、強欲なお客様方を待っていた。


やってきたのは強欲過ぎるお客様の少年、ファイン。


特徴的な紫に近い黒色の髪、鮮やかな真紫の目。


隠しているつもりらしい腕や足の傷、打撲傷。



深いことは聞く気はなかった。



「本当のお願いがまだ残ってるからここに来るんじゃん」




溜め息一つこぼれてしまう。


その呆れてしまうくらいの明るい笑顔。


ほんの少し羨ましい。




「何回来たらその本当のお願いは叶うなかな?」




こんなことを言いつつも、本当は毎日と言っていいほどここに来て欲しい。


こんな純粋な笑みをするお客様はファインだけ。


この笑顔を見るだけで心が軽くなる気がするから。


だから………。




「さぁ何回だろうねー!魔女さんが名前を教えてくれたらかな?」


「私の名前?……忘れた。ずっと魔女で呼ばれていたから」




えーっと文句を言いつつ、真剣に考え込むファイン。


こんな楽しい時間はいつまで続いてくれるんだろうか、なんて嫌なことを考えてしまう。




「えー!じゃあじゃあ…"ファルファル"は?」


「何それダサすぎ……せめて"ファル"じゃないか?」


「じゃあ名前は"ファル"!魔女ファル!!」



私の名前。


ファル。


魔女以外の呼び方。