おーちゃんがもう少し軽くて、背負いやすかった頃。
気候もまだ柔らかくて、赤子一人背負って散歩をするのが、苦じゃなかったんです。

で、調子に乗っちゃったんですよね。

赤子を背負ったまんま、結構歩いてしまって。そして、涼むのを兼ねて入ったスーパーが、妙に安くて。

…買っちゃったんです、色々。普段行かない地域のスーパーだから、こう、楽しかったのもあって。
量にして、スーパーのビニール袋2つ分。

それを、両手に、一つずつ提げて、まぁバランス的には丁度よく。

帰り道はながーーーく感じるけど、でもまぁ行くしかないんで。

袋を提げて、赤子を背負ってえっちらおっちら帰路を急いでいて。

前方から、自転車を引いたおばちゃんがやってきたんです。
何で漕がずに、引いているかと言うと、後ろに大きな布団のような塊をくくりつけているから。

で、ふと足を止めてこっちを見てる。

あーこれは話しかけられるな、と構える私。
赤子連れでおばちゃんに話しかけられる率は異常(当社比)。

そしたら案の定
「ね、この辺の人?」

…あれ?予想と違って赤子スルー。でもね、私もいい大人なんで。ちゃんと答えました。

「あ、違います」

だって、近所じゃないからね。今日はたまたまこっちまで来たけど、全然この辺の人じゃない。

そ、れ、な、の、に!!!

おばちゃんが、続けるのよ、話を。

「この辺の人?あそこにさー、クリーニング屋さん、あったじゃない?」

おばちゃんが、今自分が来た方向を、指差すの。
私、目が悪くて。それに、元々知ってる地域じゃないから、本当に分からない。
でも、おばちゃんが差す方向を一緒に眺めてみたんです。

「…はぁ…」

一応相槌も打ってみた。


「でね、今行ったらね、看板も外されてるし、シャッターも閉まってんのよ!つぶれたの?」

…おかしい。私が『この辺の人ではない』という情報が抹殺されている。
仕方ないのでもう一度
「どうなんでしょうねー、私、この近所じゃないんでちょっとわからないですー」

って言ってみたの。

…そしたら、おばちゃん、怪訝な顔で私の事を上から下まで見る見る見る。

そこで自分のミスに気づく私。

背中に赤子。両手にスーパーのビニール袋(しかも、ベタに長ネギが飛び出す正しいスタイル)
…うん、確かに私、完全にご近所スタイル。
寧ろ、お前その格好でどこまで行くんだ、って言う。

おばちゃん、最後まで私を怪しむ視線をぶつけながらしぶしぶ自転車を押して帰っていき、何だか無駄に傷ついた私。


確かに、私も、悪かったけどさ…

そしておばちゃん、私もこの辺の人じゃないからわからないけど、おばちゃんのくれた情報(看板外されてる、シャッターしまってる…)から察するに、多分そのクリーニング屋さん…



つぶれてるYO!