ふわふわと、何の問題も無いように笑う。
十夜のいっていることは冗談ではなく、明日になれば亜美の機嫌は直って、普通に話しているのだから驚きだ。
友達、というよりも家族や兄弟と言った気楽な関係なのかもしれない。
俺にはそこまで気安い友達がいなかったから、少し羨ましい。
「で、守。帰るの?」
ふと思い出したようにこっちを向いて聞いてくる。
「あぁ。桜、思い出してなかったんだろ?なら、今日はもう帰るよ」
本当は、まだまだ桜の木の下に座っていたい。
けれど、これ以上ここにいるのも十夜を心配させるだけなんだろう。
十夜は笑っているが、その瞳は「早く帰りなよ」と語っている。
「目は口ほどに物を言う…ってやつか」
「え?なんかいった?」
あえて聞こえないように呟いた声は、俺の予想通り聞こえなかったようで、なんでもないと首を振った。


