桜の約束





『あの、えっと…はい、そうです』



自分で自分をバカと言っているけど、私の言いたいことはちゃんとわかってくれて居た。



その通りだ。



ただ、自分でも理解のできないような言葉をちゃんと理解してくれたことに驚いて、ちゃんと肯定できなかった。



…でも、なんでずっと桜って呼んでくれていたのに、淡井に戻ちゃったんだろ?



あれ、どうして私そのことに残念だと思っているの?



あまり面識もない人に名前の呼び捨てされるなんて、不快なはずなのに。



沈黙が重い。



「あ、あの…私、まだあなたのこと思い出してなくて」



まだ、記憶が戻っていないことを言っていなかったから、一応伝えておく。



記憶を取り戻すため、って言ったのだからわかってると思うけど、沈黙を破りたかったからこの際なんでもよかった。



『あ、うん』



返事が返ってくる。


やっぱり、伝えなくても知っている。


後ろに、知ってるよって付いてきそうな言葉だった。



「私、思い出さないといけないんです…よね…?」




『ん?…え?』



言ってから、しまったと思った。


野上くんも、不思議そうに問い返してくる。



私はさっき、記憶を取り戻すために掛けたと言ったのに。

矛盾した一言。



無意識に言ってしまうほど、やっぱり私は記憶を取り戻すことに疑問を持っている。