『いや!桜は悪くなくて!悪いのは俺で…って、あー!もう。俺、何やってんだろ…』
迷惑、って言われなくてホッとした。
だって、私が電話したのはもしかしたら記憶が戻ったからじゃないか、って思って電話を掛けて来たなら私の反応に迷惑って思っても不思議じゃないから。
だけど、野上くんの焦りは私にも移った。
「あの、私…守くん…?えっと野上くんの、彼女だったって聞いて…あと、その…携帯の電話の履歴が、全部野上くんで埋まってて…私、早く記憶を戻したいから…行動、しようと思って」
焦りと、まだ解け切らない緊張で、私が電話を掛けた理由がうまく説明できない。
下の名前を呼ぶべきか、名字を呼ぶべきか。
それすらも定まらず、余計にどもるような喋りかたになる。
聞き取りにくいに違いないのに。
それに、彼女だったって聞いたのは事故して入院してた病院で野上くん本人が言ってたことだから、こんな風に伝える物じゃ無いのに。
失礼に決まってる言葉ばかりで、しかも上手くまとまらない文で。
だけど、野上くんはちゃんと聞いていてくれた。
「えーっと…俺、バカだからあんましよくわかんないけど、わかった!
桜…あぁー。淡井は、自分の記憶を取り戻すために行動してて、自分の記憶に一番関係ありそうな俺に電話をかけてきた、ってことだな?」


