桜の木には、まだ誰もいない。
「早すぎた、か?」
時計を確認する。
9時半。
…待ち合わせの時間は10時。
はははっ、と笑う。
30分も早くに来てしまった。
桜の下に腰を下ろして、3人が来るのを待つことにした。
「…あれ、野上くん?」
1番に来たのは、桜。
「…おはよ、桜…いや、淡井」
友達から始めると言ったあの日から、あまり馴れ馴れし過ぎないように呼び方だけは淡井にしてるんだが、何時もの癖でついつい桜と呼んでしまう。
今回も呼びかけて、苗字に直した。
それにしても…。
今日もかわいい…。
淡いピンクのワンピースがひらひらと揺れている。
ワンピースより少し濃い色のピンク、足首ぐらいのブーツはかかとがあって、いつもよりも上の方に顔があった。
照れ臭くて、直視できない。
「おはよ、野上くん。ねぇ、私のこと桜でいいよ?」
優しげに微笑む桜。
「…いいのか?」
…まだ、そこまで親しいわけじゃないのに。
いいのか?
「いいよ。その代わり…私も、野上くんのこと守、って呼んでもいい?」


