「ちょ、ちょっと待って!!その男は…まだ…女を…好きな…の?」

すると…山科は、トラックを急に脇に止めた。そして真っ直ぐ…私を見据えた。

「いや、それ以上だ。男は、女を愛している…子供にも愛情を注ぎたいと思っている。親にされなくても…だ。」

山科は絞り出すように…ゆっくりと口から言葉を紡いだ。

ってことは…私のことを…。

「…子供ができたとき…女は、喜びました。愛情を二人分注ごうとと力を重ねていました。」
私は、ふと…思い付いた言葉をおとぎ話に付け足していくことにした。
それが…おとぎ話の男…山科秋羅への恩返しなような気もしたから。

山科は、驚いたように…目を見開いていた。

「でも…父親が現れたとき…女は、少し安堵が生まれ…その男の前だと…心を開いてしまいそうな位に…男を許せるようになっていました。」

「…どうしてだよ…。」
山科は、小さな声で呟いた。

「3年近く…息子を見てきたから。男とそっくりな…息子を愛してきたから。」

私が答えると…山科はうつむいてしまった。

「…でも、息子を奪われるかもと…今でも警戒は解けません。法的にも…勝てないことは…理解しています。だからこそ…辛いのです。許してしまう自分と…警戒し続ける自分とで葛藤し…苦しんでいます。」

これは…私の本心だった…。自分で語ってみて…始めて知った気持ちだった…。