「俺から聞くことを…信じても信じなくてもいい。ただ、今俺が言えることを全部言うから…何も反論しないで…聞いてくれ…。」
…何さ…勿体ぶっちゃって。
「はい。早く言ってください。」
「実は…」
山科は、ひとつ咳払いをして…まるでおとぎ話のような話をし始めた…。
「ある男が町に住んでいた…。そして、女が一人住んでいた…。男は、女を嫌っていたはずだったが…本当は、好きだから…嫌いな振りをしていた。」

「俗に言う…好き避けですね。」
「…あぁ。」
山科は、運転を始めながら…話を続けた。

「そしたら、女は…男の知り合いを好きになってしまった…。悔しかったけど…女の幸せのために…知り合いと女が会えるように仕向け続けた。」

「優しい男ですね。山科先輩と違って。」
「…お前、人の話、最後まで聞かないやつだろ…。」
山科は、大きくため息をついて…また話を続けた…。

「二人の幸せを願っていた男だったが…知り合いは、女の好意を知った。でも…知り合いは…たらしだった。…どう言うことかわかるよな?」

「…はい。ヤろうとした…と。」
「そういう事だ…。」
山科は静かにうなずいた。

「それを…知り合いから聞いて…男は…こんなヤツに取られたくないって思った。そして…」

ここまで言うと…山科は何も話さなくなってしまった。

「…先輩?」
「んあ?悪い…嫌なこと思い出しちまってた…。もっと、柔らかく言わないとって思うんだけどよ…。」

山科は、私の手に、自分の手を重ねて…ゆっくりと深呼吸をした…。

そして…話を続けた。

「だから…女を…襲った。そうすれば…女が…町に出てこなくなったと思ったから。」
私は、あのときの事を思い出して…睨み付けた。

「フッ、そんなに睨まなくても…お前の言いたいことは感づいてる。話、続けるぞ。」
「はい。」

山科は、なだめるように…私の手をさすった。

私が落ち着いたところで…話はつづけられた。

「案の定…女は町に出てこなくなった。でも…何年か経ったとき…その女は…男の近くにやって来た。そして…女は、子供をつれていた。」
「え?」

それって…私たちの…事?

気になって…思いきって聞くことにした。
「あの…それって、女って、私?」
「…だとしたら?」
「…だったら…その男は…山科先輩?」
「…で?」

もし、ここまでの事が…私たちの事なら…!
「…知り合いって……宇治くん!?」
「…別に信じなくてもいい…どうせ!!おとぎ話のような話なんだから。」