教室に戻ると…そいつの席のとなりは…俺になっていた。

最悪…。

「おい!」
「…。」
無言で振り返った女は…長い髪をひとつに縛っていた。頭の下の方に縛っていて…少しだけおばさん臭かった。

顔は、色白であんな力強くノートを奪うやつには見えなかった。

俺は、そいつと話がしたいと思った。でも…授業が終わると、すぐに席を立っていってしまうそいつには話なんか出来もしなかった。

そんなある日…俺は、放課後まで担任に説教を食らっていた。

はぁ…ダルい。

俺は、教室に荷物を取りに来ていた。その時…教室から女の声が聞こえてきた。
「やっぱり無理だよ~」
「なに言ってんの?宇治くんのこと好きなんでしょ?」

ん?宇治の名前が出てる…。
面白そうだから…聞いててやるか!!

後でからかってやろ…。

「だって…告白したら…山科になにか言われるかもしれないもん…無理だよ…。」
…は?俺?何で俺が出てくんの?
確かに仲は良いけど…そこまで俺だってキチガイなことしねぇし…。第一、俺がなに言おうと…アイツが…宇治が助けるだろ…。

全く…誰だよ…そんなこと言ってくれてるやつ!!

俺は、物音を立てないように教室の後ろから覗いた。

そこには、女一人と…片瀬…夏海が座っていた。
俺が除いてることに気がつかないのか…話はつづけられた。

「それに…山科は私のこときっと嫌いだと思う…。階段のいたときに無視しちゃったし…。」
…気づいてたのかよ!!なんか…腹立つ。


次の日から…俺は、片瀬に今まで以上に声をかけるようにした…。
そして…俺と片瀬でやる仕事は、全て宇治に押し付けるようにした。

そうすれば…片瀬も、俺への反応が変わるだろうと思ったから…。

この時から…コイツに、クラスメイト以上の感情があったのかもしれない。いや、もしかしたら…初めてあったときから…気持ちが変わってしまっていたのかもしれない…。

でも…片瀬の気持ちは…変化することはなかった…。それどころか、片瀬は俺を今まで以上に避けるようになっていった。

俺のなかで…少しずつイライラがたまっていっていたある日…のこと。