冥に進めば王様業！？

　でも本当にキレイな人だ。外見で判断すれば３０前半。でも福山さんみたいに実際はもっと年上かもしれない。妖艶ないでたちとか考える前に、超ウルトラスーパーミラクル美形！と叫びたくなる。
　これは決して私の語彙力が貧相ということじゃない。私の周りにイケメンなどいないから基準がサッパリ分からないが、１００人中１５０人がビューティフル！と声を揃えて言いたくなるハズだ。マッドサイエンティストにこういう人がいるのなら少女・淑女・ご年配......いや熟女、年齢問わず”どうかわたしを使って”とハートマーク付ける勢いで喜んで人体実験に身を捧げるだろう。
　もしかしたら男まで虜に............止めておこう。これ以上の妄想は取り返しのつかない領域にまで踏み込んでしまう。（まだ純真無垢のままでいたい）
　「いや、私（わたくし）は.............」
　灰色に紛れる黒目を開きおどおどと言葉を出そうとする。
　よし、自殺の決意が揺らぎ始めたな。もう一息。続けて説得を試みる。
　「その年で人生諦めるなんてもったいないって。こんなところで死ぬ為にテストや受験を乗り換えてきたんじゃないだろ。だから............」
　「ノレッジ！無事か！？」
　扉が壊れるかと思うほどの盛大な音が、突然の来訪者を歓迎した。一緒に舞い込んできた草の香りを放つ風は光源であるロウソクの灯を揺らし、こもった空気をかき回した。新鮮な空気が肺に入ったせいか、落ち着きという感情が乱雑と浮遊している説得言葉の中から浮上してきた。