冥に進めば王様業!?

 騒ぎを聞きつけたのか、わらわらと他の天使もどき達も集まってきた。 
 「どうした?」
 「おい、あいつの髪と目を見ろ。闇色だぞ。」
 「まさか、冥王か?」
 「馬鹿か!こんなところに冥王がいる訳がないだろ。どうせ、俺達に一矢報いようと染めたんだろ。」
 「忌まわしき冥族が敬愛する闇色を纏うなんて、とうとう人間も頭がおかしくなったか?」
 さっきから何言ってるんだあいつ等は。冥王?冥族?闇色って黒のことか?別に黒眼黒髪はアジアではそれほど珍しくないはずだ。とりあえず、黒色をもつ奴に対してかなりの敵対心を抱いていることは分かる。”忌まわしき”なんて、今時時代劇ですら耳にしないような蔑み方をするぐらい。
 「くろい・ろ?」
 襲撃団が集まり震えていたブライドが、驚愕に満ちた視線を私の髪と眼に向けた。
 「ごめんなさい!お願いですから命だけは取らないで!」
 「えっ……何言って‥....」
 「何でもします。何でもしますからっ!」
 さっきまでとは尋常じゃない怯えようだ。突然の命乞いに反応が返せない。
 「うるさい!めんどうだ、2人まとめてやれ!」
 1人がそう喚いて手を向けると、つられて他も続いて手を向ける。あの炎玉を出す気か!しかも今度は複数。
 「あんたら!なに勝手なことをいってるんだ!」
 未だに怯えるブライドの前に立って言う。
 「村を焼いて、大勢の人達を傷つけて、こんな子供にまで恐怖心を植え付けるなんて。天使の格好しておきながら、慈悲もなにもあったもんじゃない!悪魔って呼ばれても文句言えないぞ!一体、ここの人達が何やったていうんだよ!」
 「小娘の分際で喚くな!大人しく黒こげに........」
 リーダー格らしき奴が、まあ待てと言うように手で遮った。いいだろう。どんな言い訳をするのか聴いてやろうじゃないか。
 「十分やってるさ。こいつらは存在自体がクズだ。俺達、天神に劣っている時点でな。」
 劣る?
 「にもかかわらず、俺達よりも大量の食料を貯蓄してる。生意気だ。だから奪い傷つけ自分達の身の程を分からせる。それだけさ。」
 その通りとケラケラと耳障りな複数の笑いをたてる。
 それだけ?
 そんなくだらない理由で村の人達を痛めつけたのか。食べ物の貯蓄率が低いのは、ここの人達がアリであんたらがキリギリスだっただけに過ぎないじゃないか。
 私に対して説明し終わり満足したのか、ブライドの方を向いた。
 指を指されてブライドがビクッと体が動く。
 「そこのガキ、お母さんに教えてもらえなかったのなら覚えておけ。所詮力を持たない人間は価値なんてない。それこそ生きる意味も生まれてきた意味すらないほど『黙れ』」