冥に進めば王様業!?

 隅に避難しようと向きを変えると、1人の天使もどきが赤い玉を乗せた手を向けていた。その先には子供、男の子か?どこかで怪我をしたのか、足にスライディングし損ねた感じの擦り傷が。
 誰がどう見たって弱いものいじめの光景。ついさっき見た気もするけど、それとこれとでは危険度が違いすぎる。さっきのを青信号とするとあれは赤信号をとっくに振り切っている。
 これは見過ごせない。
 「やめろ!そこの君、早く逃げろ!!っえ?」
 自分の危機に気付いたのか振り返り、チラリと見えたキツネ色の瞳。
 有り得ない。日本人の形質色ではないということじゃない。光、意思がないと言ったらいいのか。何もかも諦めた目、生きる意味さえ分からなくなったそんなふうに伺わせる。写っているのは、どんどん近づく無機質な赤と黄色。
 だめだ、そんな目をしちゃだめだ。
 そう思ったときには体が出ていた。走って走って走って走ってダイビーーングキャーーッチ!
 「わっ!?」
 「なに!?」
 「ズザーーーーー!!」
  1・男の子 2・天使もどき 3・痛い擬音..........
 炎が当たる前に男の子を抱え込み、自分が下になるように体を捻りながら前のめりに地面を蹴った。運動能力が平凡な私にしては、プロ顔負けのスタントだと自負してもいいな。背中は打って、腕は派手に擦りむいたけど....
 「あっ、あの.......大丈夫ですか?」
 僅かばかり意思の光が戻ったキツネ色の瞳がのぞき込んでくる。
 「ああっ、ごめん平気だよ。えーと君は..........」
 慌てて起きながら問題無いことを証明し、そっちこそ大丈夫かと聞き返そうとするが名前が分からない。
 「ブライドです。その、えっと助......てくれ.....ありが....うございます..........」
 「そんなのいいんだよ。それより、大丈夫かブライド?」
 キツネ色の目、少し暗めの金髪の男の子の名前も判明し、いろいろとホッとしていると、
 「おいっ、そこの妙な服のお前!邪魔をするな!」
 存在が無くなりつつあるのを感じたのか、天使もどきが失礼な台詞を大声で怒鳴った。せわしなく翼を動かしてホバリングしながら。ハチドリかよ。