涙恋〜甘えた幼なじみの忘れ方〜





救急車の音が聞こえて、反射的に耳を塞ぐ。

認めたくない。嫌だ。

嫌だ嫌だ!!

しゃがみ込んで、目をギュッとつぶって、全てを拒絶した。


「夏希。」


耳を塞いだって、全部の音が聞こえなくなることなんて、ありえなくて。

目の前に秋山君がしゃがみ込む気配がして、耳を塞ぐ手に力を込めた。


「きいて。夏希。」


そんなあたしの手の上に、秋山君の手が重なる。

救急車が音を鳴らして、この場から遠のいていくのが分かって、目を開けた。


「あいつのところへ行くか、それとも家に帰るか…選んで?」


目の前にしゃがみ込む秋山君の目は、真剣で逸らしたくなる。

認めたくないあたしのずるい心は、秋山君にはお見通しな気がして…。