「どこか、寄ろうか」



あの人の香りのする智尋。

だけどそれは、仕方が無いことで。

あたしだけのもの、じゃないんだから。



「…智尋、」

「ん?」

「…っ、ごめん」



こんな汚い気持ち、捨ててしまいたい。

こんな汚い独占欲、消えてしまえばいいのに。


怜へ恋してたときは、こんな気持ちになっても、抑えられてたんだ。


だから、きっと…

きっと、抑えられるから。



「カフェ、はいろっか。」



ゆるく繋がれた手が、優しくて、あたたかいのに。

心が真っ黒で、申し訳なくなった。