その匂いは、忘れるはずのないあの香り。 …忘れられるはず、ない。 あの人の香り。 「…っ、」 その匂いに気づいてしまったら、笑えなくなって。 どんな顔をすればいいのか、わからなくなった。 「夏希?」 「っ、あ…、」 「どうした?」 聞くと決めたくせに。 いざ、突きつけられると思考が停止するだなんて。 「っ、」 そんなあたしを見兼ねたように、優しく腕をひかれた。