出来ることなら…言いたくなかった。

"おめでとう"の5文字。


ーーー「なっちゃん。
おめでとー…言って?」


だけど、あんな顔でそんなことを言われてしまったら、断ることなんて…出来るわけがない。

膝に残るほのかな怜の温もりに、切なくなって胸が苦しくなって仕方がなくて…。


「あー、もう…」


頭の中にあるのは、怜の"カノジョ"である鞠さんのことばかり。


「完璧失恋じゃんか…」


結局あたしは、怜の幼なじみから成長することなんてできなかった。

その結果だ、自業自得じゃないか。

…怜に歩み寄る、覚悟なんてもの、無いに等しかったんだから。

勉強机の上にある参考書に、何箇所かシミができた。