「…ねえ、夏希ちゃん。」
さっきまでのふざけた様子がどこにもなくなった赤縁メガネの彼は、真剣な声であたしの名前を呼んだ。
「苦しくないの?
夏希ちゃんたち、付き合ったんでしょ?」
「…智尋から聞いたんですね、付き合ったこと。」
ゆったりとそう言葉にすると、
「夏希ちゃん、答えて」
真剣な目を崩さずに、あたしに再びそう問う。
苦しくないわけがない。
やっと付き合えた、わけだし。
だけど。
「…女のコたちといるから浮気してる、にはならないと思います」
智尋は、鞠さんを思っているからこそ、他の女の子たちと関係を持っていたわけで。
つまり、それは智尋なりの愛だ。
人それぞれ、そういう感情の表し方が違うのだから、勝手に妬くのもどうかなと感じた。