「しない、でしょ。」


その声がやけに切なくて、涙がこぼれた。

顔と顔の距離をぐんと縮めて、怜のソレとあたしのソレ重なりそうになる。

咄嗟に身を後ろに引くと


「逃げないで。」


後頭部にまわされた腕に阻止されて、重なりそうになった瞬間に


ーードンッ


「やっ…!!」


怜を突き飛ばした。

さっきあれほど近かったというのに。

どうして今更、なんてそんなの頭から抜け落ちた。