「夏希。」


急に首に手を回したはずのあたしに、秋山君は優しく抱きしめてくれた。

強引に押し倒されていたあたしを、秋山君は自分の方へ引き寄せた。


「…彼女になってってアレ…ごめん、冗談なんだ。」

「え…?」


告げられた優しい声に、驚きを隠せなくて。

でも、ギュッと抱き締められた力が弱まることもなくて。



…秋山君?



「名前。」

「名前?」

「秋山君、じゃなくて、智尋って呼んで?」


それが俺のお願いだよ。と言って、あたしをその腕の中から解放した。