音を立ててしまった扉。

そこから、目を逸らせずにボーッと見ていた。


「はあ…」


零れ落ちたため息にハッとして、髪の毛をグシャグシャにして、頭を抱える。



…好きかと聞かれて、素直に好きだと言える関係だった。

だけどそれは、"幼なじみ"という関係の手前であって、"恋愛感情"というものの前では言えるわけがなかった。


「なっちゃん…」


一つ年上の夏希。

俺と突然距離を置いたのは、ヤキモチだと思った。

いつもいつもそばにいた俺にカノジョが出来たから。

だけど、それはきっと違った。


ーー「ちぃくん…カノジョが出来たの。」


鞠から告げられたその言葉に衝撃を覚えずにはいられなかった。