「…鞠。」 ベンチの前。 女の子の前にしゃがんだ秋山くんは、 「どした?」 優しい声音でそう声を掛ける。 グスッという鼻を啜る音が鳴って、 「…っ、くん、が…」 小さな小さな消え入りそうな声で言葉を紡いだ。 「あ、たしのこと…っ、わかんなく、て…っ、」 そういった瞬間、あたしの足は怜の病室に向かっていて。 秋山くんは、鞠さんを 「…そか。」 ギュッと抱きしめた。 たった二文字でさえ、震えていたけれど、鞠さんの泣き声に被さって、儚く消えた。