「ここだよ。」 前川怜、と書かれたネームプレートが壁にかけてある。 いるんだ、ここに。 怜が…ここに。 不安で震える手で、ドアを開けようと、手をかけると 「鞠…?」 隣から、そう呼ぶ声がして、思わず秋山くんの方を向く。 秋山くんは、少し離れたベンチに座る女の子の姿を見て、ゆっくりと歩き出した。 それをみて、扉から手を離し、ふたりの方へ歩みを進める。