―ザァァ…

風が吹き、心の髪と俺の髪がが風にのってなびいた。

心は髪に気をとられ、手で押さえている。

俺は少しの間、そんな心の姿から目を逸らせなくなってしまった………


風は、少しずつ小さくなっていき、髪も元に戻っていく。

そして、

『なら、』

俺は口を開いた。

「ん?」

心がまた俺に視線を戻してきた。

『なんでそんな泣きそうな顔してんだよ。』

俺は躊躇することなく、その言葉を発した。

心の目が揺らいだ。

『そんな顔で言っても説得力ねぇよ。』

心は、意味が分からない。とでも言いたいかのように言葉を並べた。

「私普通だよ?」

どこが…?

『普通じゃない』

嘘つくなよ

『それで笑顔を作ってるつもりかよ…』

「…………っ」

心は言葉を詰まらせた。

『無理してるのバレバレ』


…だって、そうだろ…――


一見、明るいいつもの心だ、と感じさせる声―

でも、違う。


震える声を無理矢理抑えこんで、
…無理に明るく振る舞っている。

それぐらい分かる………

―パシンっ!!!


えっ……?

突然肌を叩くような音がした。

心の方を向けば、両手で自分の頬を叩いた。

心……?

心は、目をギュっと閉じ、何度も、何度も自分の頬を叩いていた。

だんだん赤くなっていく…――