「ごめん杏、待ったよね?」
ほら、あたしが、何を言うかわかってるくせに、優しいんだよ。
「恋、あたし、恋を利用するなんて最低だよね。こんなに優しいのにさ。別れよ?このままあたしといると不幸になる。ずっと側にいてくれてありがとう」
あたしが言い終わると恋は
「こちらこそ、ありがとう。虹哉に想い届くといいな」
そう言って涙を流した。
「恋、ごめんね。ありがとう」
あたしはそっと、恋の頭を撫でた。
「ははっ、ごめんな。ほら、行けよ。恥ずかしいから」
その時の恋は、今まで見た中で一番かっこいい笑顔だった。
でもその背中は、今まで見た中で一番弱かった。

