「好き、は分かんだろ」
「分かんねーよ。自分が分かんねーんだよぉ!」
「おい、どうした」
陽人の顔が、心配の表情に変わった。
当たり前だな。いきなり目の前のやつが頭抱え出したらそうなるよな。
「お前とか蓮本とかと一緒に笑ってる姿見てからだよ」
「へ?」
その時、突然陽人が話し始めた。
俺はすぐに理解できずに、きょとんとした顔で陽人を見つめた。
「だから、さゆを好きになった理由」
恥ずかしいのか、陽人はこっちを見ずに、雑誌に目線を落としながら話す。
「俺とアユと笑ってる姿?」
「ん」
「どういうことだよ。詳しく」
「無理。これ以上は話さねぇ」
「ケチケチすんなよ」
「うるさい」
そう言いながら、少し耳を赤くしている陽人が可愛く見えた。
同時に、羨ましくも思えた。
紗雪のことが本当に好きで、何の障害もなくまわりにも、もちろん、本人にも言える陽人が羨ましくて。
俺の想いは、隠すしかなくて。
本人になんて絶対言えない。

