第四章

翌日、目覚めはよくなかった。
今、何時…?
5:10…
頭の中のもやもやは昨日よりも増している。
「…っ!」
私はほかに何もできなかった。
…優也先輩からのメールを開く。
その時、私はしばらくの間動けなかった。
「宙ちゃん…何かあったんだね…?」
どうして…?
どうして優也先輩は私のことを…!
いや…あれはただの…
あれはただの八つ当たりだっただけ!
私には何もなかった!
何も、ない…
「ごめんなさい、今のはただの八つ当たりでした。だからもう…忘れてください!」
送信。
ただの…八つ当たり…
宇羅に対しての…
ダメだ。これ以上いったら…!
携帯が光る。
「先輩…」
差出人は見なくてもわかった。
まだ朝5:15なのに…
「忘れないよ。何かあったんでしょ?いいよ、相談して…?」
この時、私の中で何かが切れた気がした。
「なんですかそれ!あなたには何もわかりませんよ!わかったようなこと言わないでください!私は何もないって言ってるじゃないですか!!!」
送信。
はあ、はあ…
もう、いやだ…
先輩とメールしたくない…
そう思いながらも、私はしっかりと返信をしていた。
「いいよ、気が済むまで八つ当たりして。」
それを見て、私は…
なぜか、先輩に貰ったボタンのことを思い出した。

「ごめんなさい!もう、私なんか放っておいてください!」
送信。
そして、ボタンを取り出した。
…おもいきり壁に投げつけた。
コッ
おもいきり投げつけたのにこんな音しかしないなんて…!
携帯が光る。
「うっ…」
「…?」
こういうメールはたまに来たことがあったから何も感じないでただふざけているんだろう、そう思った。
「なんか…痛かった…」
もしや…!
「なんでですか…?」
送信してから、私はまたボタンを壁に投げつけた。
「うっ…また…だ…」
やっぱり…
このボタンは…
「先輩…」
私はその時初めて気づいたのだ。
このボタンは…
優也先輩の代わり身…
いや、代わりモノなんだと。

代わりモノ…
心がこもっているモノ。
その分、衝撃も痛みも同じように感じてしまう。
そんな話を聞いたことがある。
嘘じゃなかったんだ…
代わりモノを壊してしまったらその本人は…
その時宙は、このボタンを何よりも大切にしなければならない、そう確信した。