「……いきなり…どうしたの?」
驚いた気持ちを見透かされないように、平然を装って理玖くんに問いかけた。
「ずっと思ってたんだよ。
陽菜が経済学を好きなことは、俺でも見てて分かる。
陽菜のゼミの教授も、陽菜が大学院に行かないことが勿体ないって言ってるんだよ。
俺ばっかり大学院で修士課程を終えて、そのまま博士課程に進もうと考えている事が申し訳なくて…。」
そう…理玖くんは大学院で2年間の修士課程の後、国の特別研究員として博士課程教育リーディングプログラムの一員になることが決定している。
その際一般企業に勤めるように、給料は支払われるので生活の面では全く問題はないのだが、さすがに大学院に行かせてもらう程の余裕があるわけではない。

