長いようで短かい、苦しくもあり結果が出るのが楽しみでもある(って人も稀にいる)期末考査が終わった。答案が返されて落ち込んだり、喜んだり、様々な感情が交錯する中、精神的にほっと一息つけるようになる頃には、夏休みも目前となる。
ざわざわと落ち着きが無くなる1、2年と違って、3年の階の空気は心なしか重苦しい。先ほど最後の教科のテストが返され、教室のあちらこちらからは悩ましげな溜め息が漏れ聞こえていた。

窓側の席に座っているセイジのもとへと歩み寄り、隆は窓の外に目をやった。
梅雨明けの真っ青な空が目に染みる——早くも日差しは真夏のように、突き刺さるような強さである。


「う〜、今日もあちー!」
「テストも全部返されたし!あとは三者面談。で、いよいよ夏休みかー……」

中学最後の夏かぁ、としみじみしながらセイジの方を見てみると……ダランと机に突っ伏して、青ざめて死にかけていた。


「おーい、大丈夫か〜?」
(こっちは陰気な青だな……)

セイジ
「全然ダイジョーブじゃない……
ヤバい……本気でヤバいわ俺……」


(そんなに悪かったのか……?)


きっとほとんどの受験生が、夏休みは学校と塾の課題に忙殺される運命にある。俺のように特定の教科だけ夏期講習で補おうなどというお手軽プランを計画中の生徒は少数派だろう。併願をいくつもするヤツは、それだけ試験対策も多岐に渡るわけだし、忙しいのは当たり前で……
親に教師に講師に励まされ責付かれて過ごす窮屈な夏——セイジのとこはまさにその典型だった。

来週には学力や志望校など今後の進路についてみっちり語らう三者面談という七面倒くさいものもあるし、夏休み中には推薦を狙う生徒を筆頭に、何度も面接指導がある。
そもそも年頃になると親を交えて先生とアレコレ話すなんてかなり気が進まないものだが……辛くもそれをクリアしたところで、必要なら夏休み中でも再三面談が行われるのだから、どこにも逃げ道がないのは精神的にキツい。
この時期、素行不良が目立つとかで先生たちは警戒しているが、理由を考えれば当然の成り行きに思える。


(当事者である俺らもそうだけど、先生たちも心配事が多い上に忙しい夏になるんだろうな)
「まぁ、それが仕事なんだから当然といえば当然か……」


7月の上旬――

暑くて苦しい勝負の夏、中学最後の夏休みが始まろうとしていた。



* * *