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 わざわざ同じ部活に入ってまで七瀬さんに群がる野郎共イコール特に熱中している集団で、セイジが時おり「取り巻き連中」と呼んでいたことに改めて納得する。連中はとにかく常に七瀬さんと接触するチャンスを窺っていて、その行動は極めて地味ながらもどうにかして気を引こうと必死なようだった。
そんな中、コンピューター部員の新入部員でただ一人3年の、凪 洋介は驚くほど態度があからさまで、こちらがヒヤヒヤしたりする。人の事は言えないが、コイツがまた結構な確率で2年エリアに現れる。だいぶ本気のようだ。おそらく七瀬さんと一緒にいられる最後の年であるということが、一見すると控えめな雰囲気の凪を追い立てているのだと思うが……それにしたって七瀬さんの鈍感スルースキルが見事すぎて、ヤツには勝ち目がないように思われた。

そんなふうに可能性の有無について憶測してみたり、当事者の思考を推し量ってみたり、どちらかと言えば男目線で感情移入したりしながら観察できるのは、ズバリ他人事だから――

こうして静観しているだけなら、学ぶことはあれど失うものは無く、晒すことも無ければ傷つくことも無い。精神的にも体力的にも疲労とは無縁なわけだが……


(好きでやってる凪は良いとして、七瀬さんはあんなに露骨に迫られて、嫌じゃないのか?
俺だったら、ウザい!寄るな!っつって絶叫しそうなもんだが……まさか内心では喜んでるとか?)

(だとしたらサッサとくっつきそうなものだしなー……ということはやっぱり鈍いだけ?
まさか男を手玉に取って玩んでる……とかではないだろうしなぁ、七瀬さんのキャラ的に……)

仮にも俺はコンピューター部の部長なわけで、部員たちの動向をチェックする義務がある――というのを建て前に、今日も俺は謎解き考察を楽しみながらの見守りモードだ。
七瀬さんとその取り巻きの動向観察に勤しむことは思いのほかストレス発散に良いようで、いい感じにテスト勉強期間の息抜きになっていた。