猪瀬のパートナー要請から僅か一週間。

早くもその日はやって来た。

ある地方興行でのメインイベント、60分一本勝負。

猪瀬 寛至、大谷 晋二組vs藤原 明喜、ダン・フライ組。

両チームはリングインし、ゴングを今や遅しと待ち構えている。

「大谷」

猪瀬が声をかける。

「まずは俺が行こう。相手の出方を窺ってきてやる」

それは経験の浅い大谷に対する猪瀬の気遣いだったが。

「いえ」

大谷はそれを拒否する。

「猪瀬さんはチームの大将です。どっしり構えていて下さい」

大谷は藤原達ヒールユニットを睨み据えた。

「俺が最初に出ます」