そんなある日の事。

「大谷はいるか」

道場でトレーニングをしていた大谷のもとに、突然猪瀬がやって来た。

襲撃事件で藤原と袂を分かって以来、大谷は藤原を師と仰ぐ事も出来ず、独自にトレーニングを積んでいた。

そんな大谷に、猪瀬の突然の来訪。

まだ若手の大谷が、猪瀬のようなトップレスラーに声をかけられる事は珍しい。

すっかり委縮してしまう大谷に。

「そう固くなるな」

猪瀬は肩を叩く。

「これから一緒に飯でも食いに行かないか、何が食いたい?言ってみろ」

「え…」

いきなりの食事の誘い。

緊張してまともに喋る事も出来ない大谷を。

「よし、焼肉でも食いに行くか。俺の奢りだ、ついて来い」

猪瀬は強引に誘った。