突然のデビュー戦が決まり、右往左往する大谷。

何か特別な事をしようにも、何をしていいのかわからず、結局はいつも通りのトレーニングしかできないまま、地方興行でのデビュー戦当日が訪れる。

赤と黒のカラーリングのショートタイツ、膝サポーター、リングシューズというコスチュームを身に付け、緊張の面持ちで控室に座る大谷。

黒いショートタイツと黒いリングシューズ、肘、膝のサポーターなしの組み合わせをもって『ストロングスタイルの象徴』とされており、ニュージャパンプロレスでは多くのレスラーがこの組み合わせの姿から出発する中、こんな派手なコスチュームをデビューから準備してもらえる大谷は異例だった。

彼が新人ながら、団体にどれだけ期待されているのかが分かる。

「おい大谷」

控室のドアが開き、藤原が呼びに来る。

「入場だ、行くぞ」

「は、はいっ」

大谷は立ち上がった。