「シャンとしろ、てめぇ」

藤原はもう一度、大谷の頬を張った。

「てめぇもウチに入団して、もう半年だ。ボチボチお客の前で試合しても恥ずかしくねぇだけの実力をつけた…まぁそうは言っても前座だがな」

確かに、技をかけられて受け身を取り損ねる事もなくなったし、ジャーマンスープレックスやパワーボムといった大技も習得した。

金のとれる試合…ちゃんとした『プロレス』が出来るようになったという事だ。

「で…お、俺のデビュー戦の相手は?」

うろたえながら言う大谷に。

「桜庭 和人だ」

藤原は答えた。

桜庭は、大谷より一年早く入門したニュージャパンの若手選手。

打撃や関節技を得意とする総合格闘技系の選手で、派手な技こそあまり使わないものの、確かな実力を持っていた。