激痛の中、猪瀬はニヤリと笑う。

ヒールホールドで発狂しそうな痛みの中で、笑うとは。

「桜庭…相手の膝の心配するくらいならな…」

猪瀬はアンクルホールドに力を込めた!

「はじめから関節技なんて使うんじゃねぇっ!」

その瞬間、観客の大歓声に紛れた鈍い音が、猪瀬、桜庭、レフェリーの耳にだけ届いた。

呻き声を上げ、思わずヒールホールドを解く桜庭。

慌てたようにストップを宣告するレフェリー。

打ち鳴らされるゴング。

そんな中で一人、よろめきながら立ち上がる猪瀬…。