「今日、学校でいいことがあったんだよ!」
「そか」
「テレビ、あまり面白いのしてないね」
「ふーん」

これが私とお父さんの会話。
いつもと同じ、はずまない話。

「寝るね。おやすみ」

私は我慢できなくなって
自分の部屋へあがった。

お父さんはいつも仕事で疲れている。
うちは4人兄弟で
男手ひとつで育ててもらってるから
仕方のないことだ。
大体、高校生にもなって
お父さんに構ってもらいたいってのが
おかしいんだろうな、きっと。

「お、寝るのかー?」

アホな顔したお兄ちゃんが部屋から出てきた。
まぁ、実際、アホなんだけれど。

「寝る」

さっきのことで落ち込んだ私は
お兄ちゃんにそっけなくしてしまった。

「おやすみ、裕奈」

優しい。
お兄ちゃんは私がきつい態度をとっても
いつも優しい。
その優しさが痛い。
きっとお兄ちゃんも傷ついてるはずなのに…

「おやすみ、お兄ちゃん」

明日は私も優しくなれるだろうか。