「学校にチクって退学にでもすれば?」
「何言ってるの。退学になったら困るでしょ」
「困るのは学校かもしれないよ」
私の中の結城君像から目の前の結城君があまりにもかけ離れていて、動揺した。
「俺、期待されてるんじゃない?そんな生徒が退学になるなんて、誰も喜ばないと思うけど」
乾いた口からは反論の言葉を何とか返すことができた。
「脅してるの?」
「別に?先生の好きにしていいよ、ってこと」
皮肉るようにクスクスと笑っている目の前の人は本当に優等生のあの結城肇なんだろうか。
「ゆ、結城君、だよね?」
「こんな、そっくりさん、いると思う?」
柔らかく微笑んで、首を傾げる姿が異様に色っぽくて、不覚にも見惚れてしまった。
慌てて邪魔な感情を振り払い、結城君への視線を強くした。
「チクらないけど見逃すわけでもない。今ここで、私が嗜めればすれで済む話だもの」
大きく息を吐き、一気にまくし立てる。
「煙草を吸うのがカッコいいとでも思ってるの?だとしたら大間違い。子供が粋がってるようにしか見えないわ。好きな事をしてもいいのは、ルールの範疇だけよ」
結城君の様子を見ても特に変化が見られず、顔をしかめた。

