週末、完成させた衣装を大きめのトートバックに詰めて、私は意気揚々と玄関の扉を開けた。
「またね」
タイミング良く聞こえてきたのは若い女の声。
隣人は結城君のはずだけど、と不思議に思いながら扉を閉めると、ちょうど玄関先で結城君と女のキスシーンが目に入ってしまった。
朝から刺激の強い、艶かしいキスを目撃してしまい、立ち止まっていると結城君は唇を女と合わせたまま、視線だけをこちらに向け、私を認識したのか目を細めた。
「じゃあね」
唇が離れると、結城君は可愛らしい笑みを浮かべて手を振り、女を見送った。
ガン見していたことがバレたのか、化粧の濃い私と同年代くらいの女は私を一睨みしてからハイヒールを打ち鳴らし、階段を下って行った。

