そういう時にいつも使っている無難な回答を美原先生に返した。
「・・・、読書ですかね」
漫画ですけど。
仕事してるんですけど、とオーラを放ったつもりで話を終了させようとしたけど美原先生には察してもらえず、逆に食いついてきた。
「あ、私も好きですよ。どんな本を読みます?」
まさか、美原先生が読書好きだとは。意外。
墓穴を掘った私は、またもや無難に有名作家を口にするけど、美原先生は食い下がる。
「どの作品が好きですか?私はー」
そう言って、知らない作品名を言ったので適当に相槌を打ちながら、心の中は動揺しまくりだ。
「あ、私ちょっとトイレに・・・」
無理矢理席を立つ口実を作って逃げ出した。
わざとらしかったか、と思って美原先生の様子を窺うと、「いってらっしゃーい」と呑気な声を出した。

