「不満があるのかしら?顧問の私が決定したことに」
最悪のタイミングだ。
伊丹先生は無表情の白い顔で私と対峙した。
こんなことになっても、私に嫌味を言いに来るのか、と呆れた。
「舞台裏は関係者以外、立ち入り禁止のはずですよ?」
「あの衣装はどの衣装でも代用できません。ストーリーの中で重要な役割なんです」
「ストーリーを少しいじることはできない?」
それは脚本係の部員に向けられた言葉だったけど、脚本係は「できなくはない、かもしれませんけど・・・」と曖昧に答えた。
そう言わざるを得ない雰囲気を伊丹先生は醸し出していたのだ。
「ラストを書き変えろと仰るんですか?」
「乱暴な言葉遣いはやめてくれるかしら?臨機応変な対応ってものがあるでしょう」
「そんなっ・・・!」
黙って聞いていた結城君が私と伊丹先生の間に割って入り、私の言葉を遮った。
「ここで言い争うのは時間の無駄です。ラストを書き換えるべきでないなら衣装を取りに行けばいいことです」

