擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~



「車って誰のなの?」

「部長のお母さんです。でも、今日は仕事があって、舞台は見に来れないからって行きだけで・・・」

「わ、私、学校まで取りに行って来ます!電車で行っても間に合うと思いますし」

泣いていた女子生徒は何とかミスを取り返そうとして、手を上げたが部長はそれを制した。

「1人でも裏方に抜けられたら、困るの。それに、責任は部長の私にもあるから」

女子生徒はしゅん、と肩を丸めてまた涙を滲ませた。

「伊丹先生は何て?」

「それが、伊丹先生は衣装は代用しようって」

「代用!?そんなの、できるわけないじゃないっ」

思わず語気が荒だってしまい、慌てて口を噤んだ。

私はデザイン画しか見せてもらっていないけど、どの衣装とも似ても似つかない特別派手で豪華に作られた衣装だったと記憶している。

それに、舞台が始まれば役をもらっている生徒はもちろんのこと、裏方もそのフォローで忙しくなるはずだ。

代用衣装を作ってる暇など無い。